【寄贈経緯】
成田彦栄氏(1898〜1959)は、医業の傍ら、郷土史特に考古学関係に多くの業績を残した。成田氏は戦前・戦後にかけて、郷土資料の保護に尽力し、考古資料、アイヌ資料、古文書等を広く収集した。
2008年に本学にて成田氏収集資料の展示および図録作成を行ったことがきっかけとなり、2009年にご遺族より収集資料の大部分を本学に寄贈していただいた。
『東遊雑記』は2009年12月、成田彦栄氏旧蔵書の目録作成のための整理中に発見された史料で、昭和30年に京都の古書店より購入したものと推測される。
(弘前大学人文学部附属北日本考古学研究センター所蔵成田彦栄氏旧蔵図書)

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【概要】
古川古松軒は江戸中期の地理学者で、天明八年(1788)幕府巡見使に随従し、東北地方から北海道を旅しており、その記録として書かれた紀行文が『東遊雑記』である。備中国下道郡新本村(岡山県総社市)の生まれ。古松軒は、幼い頃から地理を好み、その足跡は全国に及ぶ。『東遊雑記』の特徴は全国を歩いた古松軒ならではの視点で、東国の様子を記録していることにある。なお、『東遊雑記』には写本が多く存在する。本史料は、同書の部分的な写本(東北地方が中心)と考えられ、他の写本と校合すると細かい差異や記述の前後は見られるものの、保存状態も良好で着色の美しい図も忠実に写されているなど、筋の良い写本といえよう。