昭和40年(1965)、旧文理学部改組の際に、交付された機関研究の経費によって多くの書籍が購入され、当該の絵図類は、その一環として購入されたもので、東京の古書店からの購入であることが確認されている。

阿仁鉱山一ノ又山全図

当該の絵図は、阿仁鉱山のうち一ノ又銅山領内を描いたものである。絵図には方位と地理的な目印が示され、御台所(鉱山事務所)や蔵、神社・堂、役人および鋪主(しきぬし)・本番主や坑夫たちの住居がみえる。鳥居の有無で神社・堂が区別され、住居の形態も少しずつ異なるなど建物の形態が精細に描き分けられ、正確に表されている。さらに鋪主や労働者の住居については、「鋪主理助」、「床大工万助」のように職種と名前の両方を記し、鉱山における各職種の者が住んでいたことを明示している。砒通(鉱脈の分布状況)の描写はない。
当絵図は、藩政後期に秋田藩が山領内の建物や住居の分布状況を詳しく把握するために公的な目的で作成した絵図であり、詳細な鉱山絵図として貴重な価値を持つと考えられる。
天保10年(1839)代(推定)、108×77cm