令和2年6月18日 更新

「小山内家文書」の利用について

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小山内家文書

小山内家文書 表紙

点数:1,530点

目録:小山内家目録 (PDFファイル: 469KB)

(平成22年[2010]5月10日 貴重資料指定)
本資料は,旧豊田村(現弘前市大字豊田)村長を務め,弘前市議会議員であった小山内淳四郎氏(1904-63)から,本学が昭和37年(1962)11月15日に寄贈を受けたものである。受入れ後,附属図書館において若干の整理を行ったが,本格的な調査と分類・整理はなされないまま,新書庫5層に保管されていた。この間,一部の資料が,『新編弘前市史 資料編 近世2』に掲載されることはあったが,大部分の資料は未公開の状態にあった。
当資料は,津軽地方における近世から近代にかけての地方(じかた)文書(農村資料の総称)であり,藩政資料が多く残されている県内の現状にあって,農村資料は稀少であり,その意味でも貴重な資料群と考えられる。小山内家は,藩政時代は小比内(さんぴない)村の庄屋を務め,堀越組の小比内村・高田村・取上村等の土地台帳や村政の実務に関する基本的な史資料を同家で保管してきたと推定される。したがって,藩政時代の弘前城下近郊農村のあり方を研究する上で貴重な資料群といえよう。なかでも目を引くのは,明和期(1760年代)から残存する,土地の移動に関する大量の証文類である。証文類は,おおむね小比内村・外崎村等の借銀銭による小規模な土地の売買に拘わるものである。
藩政期の資料中で,345号の安政5年(1858)「はる詫状」は,特筆すべき内容であり,女性史の研究に大いに資する文書である。今後の分析・研究を期待したい。
近代の資料は,中津軽郡の郡役所資料と戸長を務めた小山内家の戸長役場関係資料が多くを占め,近代に入ってからの土地台帳や大小区制下における基本資料類で構成されている。小比内村だけでなく,砂子瀬村・川原平村の関係資料も戸長役場資料として貴重である。そのほか,地租・地税関係資料も豊富であり,明治10年(1877)から同22年に至る膨大な地券は,小山内家の土地集積の状況を窺うことができる好資料である。小山内家は小比内村において農業を家業としつつも土地集積をはかり,地主として村内外の人々と小作関係を結んだ。同家の土地集積と小作関係に関する史資料は膨大であり,従来の研究史では空白の分野であったことから,当該資料を用いての研究の深化が望まれる。

(弘前大学名誉教授・元附属図書館長 長谷川成一)

関連文献等
  • 弘大に「小山内文庫」贈る~遺重な農政資料~
    東奥日報. 昭和37年9月19日
  • “農村の変容”. 新編弘前市史 資料編3(近世編2). 2000.3, p.699-718 史料220号~234号
  • 長谷川成一著. 新たに指定された貴重資料の解説 「小山内家文書」
    弘前大学附属図書館報「豊泉」. (33), 2011.5, p.5
  • わび状(安政5年)
    あゆみとくらし : 青森県女性史. 青森県. 1999.3, p.8